前立腺の病気で患者数が最も多いのは、このタイトルにある「前立腺肥大症」です。厚生労働省は3年おきに患者数を出していますが、2020年からは新型コロナの影響によって、あまり正確なデータになっていません。そこで2017年の患者数を上げますと、日本では47万人でした。患者数は増加傾向で、55歳以上の男性の5人に1人が前立腺肥大症と推測されます。私たち泌尿器科医1人あたりの年間診察患者件数では、前立腺肥大症で受診する患者さんが第1位でした。
受診をしようと思うのは、前立腺肥大症による“尿トラブル”が起こるからです。尿トラブルで多いのは「残尿感」「頻尿」「夜間頻尿」などがありますが、それだけではありません。尿意を急にもよおして我慢するのが難しい「尿意切迫感」、尿の勢いが弱い「尿勢低下」、尿が途中で途切れてしまう「尿線途絶」、お腹に力を入れないと尿が出ない「腹圧排尿」などもあります。
さまざまな排尿症状を起こす前立腺肥大症――。ただ、前立腺肥大症だからと言って50代以上の男性すべてにその症状が出るわけではありません。症状が出るのは、前立腺肥大症の人の5人に1人と言われています。特に強い症状が出る患者さんは、前立腺が膀胱側に突出しているようなタイプの前立腺肥大症です。私たちが手術をするのはこのようなタイプの患者さんです。
日本泌尿器科学会専門医 加藤忍