前立腺に起きる病気で代表的なのは「前立腺肥大症」と「前立腺がん」ですが、そのほかにも「前立腺炎」「結石」「前立腺痛」などがあります。これらの病気を引き起こす前立腺は、どのような臓器なのでしょう。
前立腺は膀胱のすぐ下で尿道を囲むようにあり、クルミくらいの大きさ。男性特有の生殖器官の一部で、若いときは前立腺から分泌される前立腺液と精子とを混ぜ、受精しやすくする重要な働きがあります。加えて、生殖器官以外にもう一つ重要な働きがあります。排尿コントロールです。膀胱の出口部分の内尿道括約筋(ないにょうどうかつやくきん)、前立腺の下の部分の外尿道括約筋、そして前立腺が協同して排尿コントロールを行っているのです。
その前立腺は、内側部分の「内腺」と、外側部分の「外腺」の2つの領域に分けられ、肥大するのは内腺です。前立腺の重さは、40~50歳ころまでは20㌘前後で一定しています。ところが、その後は加齢に従って生殖機能がなくなっていき、前立腺は肥大化。前立腺肥大症は30歳くらいから次第に増加し始め、80歳にもなると90%の人に見られます。
逆に言うと、80歳になっても前立腺肥大症にならない人が10%程度いるということです。肥大は男性ホルモンの影響はあるのですが、性的にアクティブな人が肥大症になりやすいか、と言われるとそういうデータはありません。現時点では、「まだ原因はわからない」という状況です。
日本泌尿器科学会専門医 加藤忍