前立腺がんについて
前立腺は膀胱のすぐ下に位置し、尿道を取り囲む形で存在する男性特有の臓器です。正常な前立腺はクルミの実ほどの大きさで、重さは約20グラムです。前立腺がんは、この前立腺に発生するがんです。日本では、以前は前立腺がんはそれほど多く見られるがんではありませんでしたが、近年では急増しており、2020年から2024年の間には、男性のがんの中で最も多い罹患数になると予測されています。
こんな場合はご相談ください
- 健康診断でPSAが高いと言われた
- 親族に前立腺がんを患った方がいる
- 前立腺がん検診を受けたい
原因
前立腺がんの原因としては、遺伝や加齢が挙げられます。家族に前立腺がんを発症した人がいる場合や、60歳以上の男性に多く見られるとされていますが、具体的な発症メカニズムはまだ解明されていません。さらに、肥満や喫煙、動物性脂肪やカルシウムの過剰摂取といった生活習慣の乱れも、発症に影響を与える可能性があると考えられています。また、前立腺は男性ホルモンであるアンドロゲンによって成長するため、このアンドロゲンが前立腺がんの発症に関与しているとも言われています。
症状
前立腺がんは進行が遅いため、早期に治療を受けることで治癒の可能性が高いとされています。しかし、症状があまり現れないため、がんが周囲のリンパ節や骨、肺、肝臓などに転移してから発見されることも少なくありません。がんが進行して前立腺の組織が大きくなると、尿道が圧迫され、尿が出にくくなる、頻尿になる、排尿後に残尿感を感じるなど、前立腺肥大症に似た症状が現れます。進行した前立腺がんは骨や肺、肝臓への転移が起こりやすく、特に背骨や骨盤への転移が多く、慢性的な腰痛が生じることがあります。また、わずかな衝撃で骨折するリスクも高まります。
検査と診断
血液検査(PSA検査)
血液中のPSA(前立腺特異抗原)濃度を測定することは、前立腺がんの検出に有効であることが分かっています。そのため、血液検査でPSA値を測定し、PSA値が高いほど前立腺がんを発症している可能性が高くなります。
画像検査
前立腺の状態を確認するために、肛門から超音波機器を挿入して直腸を通じて前立腺を観察する「経直腸的前立腺超音波検査」や、「MRI検査」を実施します。また、前立腺以外の臓器への転移の有無を調べるために「CT検査」を行い、骨への転移の有無を確認するために「骨シンチ検査」を行います。当院では、基幹病院と連携し、これらの画像検査を実施しています。
前立腺生検
前立腺がんの確定診断に不可欠な検査です。この検査では、前立腺がんの組織の一部を採取し、顕微鏡で調べることによって、前立腺細胞のがんの悪性度を評価します。当院では、経直腸エコーを使用しながら、経会陰的前立腺針生検を日帰りで実施しています。