前立腺肥大症の薬物療法、今回は「5α還元酵素阻害薬」を取り上げます。5α還元酵素阻害薬は、基本的には薬物療法の最初に取り上げた「α1遮断薬」で効果がなく、前立腺の大きさが30ml以上の前立腺肥大症の患者さんに使われます。
この薬は、前立腺を小さくする作用があります。前立腺の肥大が少なくなることで、尿道への圧迫、膀胱への前立腺の飛び出しも減るので、排尿症状を緩和できるのです。
そのメカニズムを紹介します。実は前立腺の肥大には男性ホルモンが関与しています。とりわけDHT(ジヒドロテストステロン)の関与が強い。5α還元酵素は男性ホルモンのひとつテストステロンをDHTに変えてしまう作用があるのです。前立腺の肥大にはテストステロンよりもDHTがより強く関与するので肥大は促進してしまいます。5α還元酵素阻害薬は、5α還元酵素によってテストステロンからDHTに変換させるのを阻害するのです。それによって、前立腺は縮小します。
やはり、α1遮断薬などと同様に副作用はあります。5α還元酵素阻害薬の副作用は「勃起障害」「射精障害」「精液量の低下」「女性化乳房」など。ただ、このような副作用が少ないことでも知られている薬ですが、やはり副作用が出てくると、「この薬をやめたい」という患者さんも出てきます。その場合は、他の薬に変えて対応します。また、また、この薬を半年以上服用していると前立腺がんの検査で知られているPSA(前立腺特異抗原)の数値が元の数値の半分に下がります。数値が徐々に上昇する場合はがんにも注意していく必要があります。
日本泌尿器科学会泌尿器科専門医 加藤忍拝