前立腺肥大症で起こる“尿トラブル”は、「歳のせいだから」ではすまないので、生活の質が悪くなるのです。薬での治療をしてもなかなか症状が改善しない方もいらっしゃいます。
患者のAさんは60代半ばで定年になり、趣味を楽しもうと思われていたのです。映画やコンサート、旅行が好きだったのです。ところが、薬での治療を受けていても、前立腺肥大症の「頻尿」症状はどんどん悪化。映画館で映画を見ていても途中で何度も席を立ってトイレに走ることに――。コンサートでも同じ状況でした。また、バスツアーでは、どうしてもAさんのトイレ状況で、トイレタイムがあるわけではありません。そこに間に合わないとオシッコを漏らすことになります。「映画、コンサート、旅行にも行けないのでは、なにも楽しみがない。何のために生きているのか…」と。
患者のBさんは、60歳の会社員。管理職とあって会議がかなり多い。ところが、Aさんと同じで前立腺肥大症の「頻尿」症状が強く出ており、会議中でもしょっちゅうトイレに行くために会議を抜け出さないといけなかったのです。会議を途中で抜けると、大事な話の場合は、そこをスルーすることで話が分からなくなることも――。Bさん以外にもこういう患者さんは多いです。ただ、Bさんの場合は頻尿が原因で「みんなに迷惑をかけるので、会社を辞めよう」とまで考えられたのです。
このお二人の患者さんは手術を受けられ、Aさんは趣味を楽しみ、Bさんは会社を辞めることなく仕事に励んでいらっしゃいます。日本泌尿器科学会専門医 加藤忍