前立腺の代表疾患「前立腺肥大症」は、加齢によって前立腺が肥大化することで、さまざまな排尿トラブルが出てきます。その排尿トラブルは「下部尿路症状」と呼ばれています。
まず排尿時の症状としては、「尿の勢いの低下」「尿が出にくい」「尿が途中で止まる」「いきまないと尿が出ない」など。そのほかには、「夜間頻尿」「昼間頻尿」「尿意切迫感」「切迫性尿失禁」「残尿感」などがあります。40歳以上の人では夜間頻尿や昼間頻尿の頻度が特に高いのが特徴です。
今あげた症状の中で、急にトイレに行きたくなるのが尿意切迫感で、急に我慢できない尿意が出てしまい、もらしてしまうのが切迫性尿失禁です。これらは下部尿路症状の中でも尿をため込んでいるときにでる「蓄尿症状」で、QOL(生活の質)を低下させます。
このような症状が出る危険因子は「年齢」ですが、そのほかに「生活習慣病」や生活習慣に関わる要因も関係している、と言われています。その危険因子は「心疾患」「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」「肥満」「うつ病」「飲酒」「喫煙」「運動不足」などです。
たとえば、糖尿病の場合、しっかり血糖値をコントロールできないと早い段階から神経障害が出てきます。そして、末梢の自律神経が障害されるとまずトイレの間隔が短くなる頻尿となり、さらに悪化すると尿が出せなくなってしまいます。このような症状が糖尿病の合併症として出てくるので、生活習慣病はしっかりコントロールすることが重要です。
日本泌尿器科学会専門医 加藤忍