前立腺肥大症の薬物療法は3つの薬が中心に使われています。「α1遮断薬」「5α還元酵素阻害薬」はすでに紹介しましたので、今回は「PDE5阻害薬」を紹介します。
PDE5阻害薬は尿路血管、膀胱、前立腺の血流をよくすることで排尿障害を改善する薬。血管などの平滑筋を緩ませるのに平滑筋内のcGMP(環状グアノシンーリン酸)が関わっています。それをPDE5(ホスホジエステラーゼ5)という酵素が分解してしまうので、血管、膀胱、前立腺などの平滑筋が緩まないのです。PDE5阻害薬はその名称の通り、PDE5を阻害して平滑筋を緩ませ、血流を増やします。それによって血管も若返らせてくれます。
PDE5阻害薬は、前立腺肥大症の薬となる前から「肺動脈性肺高血圧症」「勃起不全」の治療薬として服用されています。勃起不全治療薬としては「シアリス」がよく知られていますが、それの容量を少なくしたのがPDE5阻害薬なのです。
薬には必ずある副作用ですが、PDE5阻害薬もあります。成分が同じであるシアリスで分かるように、「勃起増強」が頻度は少ないものの、現れる患者さんもいます。そのほかには、「消化不良」「下痢」「めまい」「頭痛」などが多少現れる患者さんがいます。
この薬は頻尿症状が強い場合に使用することが多く、α1遮断薬と2剤併用で使う専門医もかなりいます。一般的には最初の治療は1剤で始めますが、1剤では有効性が弱いケースではそれが選択されています。
日本泌尿器科学会専門医 加藤忍