今回は前立腺肥大症の手術の4つ目として、「PVP(532㌨㍍ レーザー光選択的前立腺蒸散術)」と「CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)」を取り上げます。
PVPとCVPは、どちらも尿道から内視鏡とレーザーファイバーを前立腺に挿入します。そして、前立腺の内腺に高出力レーザーを照射して、組織を溶かすかのように蒸散させることで、空洞を自然に作るのです。手術としては、内腺をくりぬく手術に比べると簡単・安全にできます。だから、手術時間も短く終わります。
同じように手術を行うPVPとCVP。2つの違いはどこにあるのか――。それは「レーザーの波長の違い」と「レーザーの組織への深達度の違い」です。PVPの波長は532㌨㍍に対し、CVPの波長は980㌨㍍。PVPの波長は赤血球に吸収され、水には吸収されません。それに対し、CVPの波長は赤血球にも水にも適度に吸収されます。
PVPのレーザーは赤血球に吸収されるので、出血が少なく手術ができ、前立腺の血管の豊富なところはどんどん蒸散が進んでいくのです。ただ、術者が気を付けなければいけないのは、膀胱の中で照射すると水に吸収されないので、膀胱の壁にまでレーザーが飛び、壁を傷める可能性があることです。
一方、CVPはPVPに比べて組織への深達度が深くなり、手術の仕方によっては5㍉ほど組織の中にレーザーが入ってしまいます。ということは、熱の影響が前立腺に残ってしまいます。だから、手術後には、前立腺に一種の火傷のような状態が残らないように、術者はその点に注意して手術を行っています。CVPもPVP同様、出血は非常に少なくできる安全な手術として人気があります。