今年、前立腺肥大症の手術として注目を集めているのが、「PUL(経尿道的前立腺吊り上げ術)」。この治療に使われる機器が、2022年4月1日に保険診療となったからです。今回は、このPULを前立腺肥大症の5つ目の手術として取り上げます。
PULは尿道から内視鏡とデリバリーシステムを挿入し、肥大した前立腺にアプローチします。そして、前立腺の内側から小型のインプラントという人工器具の針を刺し、その針を前立腺の外に出します。すると、先端部が横に開いてその位置にとどまります。そのインプラントを内側に引くようにすると、前立腺の組織は持ち上がって尿道は広がるので、そこで固定します。小型のインプラントはそのまま永久的に留置するので、尿道はずっと拡張を維持することになります。
ただ、このインプラントの留置は、1か所では全体の尿道拡張にはなりません。インプラントは前立腺の大きさによって最低2か所から4か所に留置します。前立腺が大きければさらに必要です。
尿道が拡張されることで、辛い前立腺肥大症の症状は改善します。
PULは尿道を吊り上げて広げる手術なので、前立腺を削ることなどは行いません。だから、これまでに紹介した手術の中で最も出血の少ない手術です。前立腺は、よく“クルミ大”と言われますが、そのクルミ大の4倍程度の80mlぐらいの前立腺肥大までが、PULの適応となります。
日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医 加藤忍